shirouto kurouto
白洲正子さんが、最後に書かれた本を読み返していた。
「いったい何が素人で、何が玄人でありましょう。そんなものは世の中に存在しないのです。
素人芸というものほどいやなものはありません。それはひがみであり、虚栄であり、責任のがれです。
素人が玄人に商売替えをすると、せっかく今まであったいわゆる素人芸のよさをまったく失って一文のねうちもなくなる人があります。
それは、その人の芸に対する覚悟がたしかでないからです。
技というものは、もっとおそろしい、もっときびしいものです。やたらめったらの向こう見ずというのが、多くの場合、素人のよさと(玄人が馬鹿にして)呼ぶものですが、それは大きな芸に対する尊敬と恐怖と謙遜と信頼がないからで、技術はともかく、精神的にはまったくズブの素人であるのです。そういうあまさのない素人は、素人といえども既に立派な専門家です。
素人のよさなんてものは、ほんとうはないのです。もしあるとすれば、それはその人の人間のよさです。
人間的に、れっきとした玄人であるのです。」
なんてことが、びしびし書かれている。
おっかないけど、腑に落ちるというか、気持ちいい。