survive
離れて暮らす、年下の友達が自ら命を絶ってしまった。
10日前までやりとりしていたのに、何にも気付かなかった。
もしも自分が、ひとりこの部屋の中に閉じ込められて、
二度と外に出ることができないことが確定して、誰にも気づいてもらえない状況を真剣に想像してみた。
何の痛みもないけれど、食べ物がつきて、体力がなくなって、やがて死ぬしかない状況。
これまでの人生で楽しかったことや嬉しかったことも、濃霧の向こうみたいにしか感じられず、すっごく怖くて、果てしなく暗い気持ちになった。
だけど、自分の体は元気なのに、この先じわじわ死ぬしかないって思うと、
やり残したことがあるとか、会いたい人がいるとか、そういうことには意外と執着なくて、
ただ、ぴんぴんした手足や、動いている心臓や、あたたかいおなかが、かわいそうでたまらなくなった。
体は何も気付いてないし、まだまだ生きる気満々なのに。
じわじわ衰弱していく辛さに耐えるくらいなら、ひとおもいに死んだほうがいいんじゃないかと思った瞬間、体の底から悔しくなった。
こんな甘ったれた想像している間にも、現実にもっともっと辛い瞬間を迎えている人がたくさんいるのだろうし、わたしと他愛もないLINEしてる時だって、友達はそういう場所にいたんだろう。
そう思ったら、起き上がれないくらい、苦しくなったけど、
自分だっていつそういう状況になってもおかしくないし、今元気に楽しく暮らしていることを申し訳なく感じるのは違うでしょと思って、空想をいったん閉じた。
皿洗いしたり、洗濯物を畳んでたら、いつもは余り好きじゃない柔軟剤の匂いや階下のテレビの音にちょっとだけ安心した。